NTTドコモの「Xi」に遅れること1年と3カ月、イー・アクセスが3月15日からLTEサービス「EMOBILE LTE」を開始した。
さらに、WiMAXを展開するUQコミュニケーションズを傘下に持つKDDIも、2012年末のLTEサービス開始に向けて基地局の設置を進めている。
ソフトバンクモバイルはやや複雑な状況にあるが、1.5GHz帯のDC-HSDPA対応端末で混雑を緩和しつつ、900MHz帯と2.1GHz帯の3G(HSPA+)をメインに据え、+αでデータ通信端末に2.5GHz帯のAXGP/XGP2を使っていくという展開だ。
このように主要通信事業者がデータ通信サービスの高速化を着々と進める中、IIJや日本通信などのMVNOからも、「IIJmio高速モバイル/Dサービス」や「b-mobile4G カメレオンSIM」のような、ドコモのLTEネットワークを用いたバリエーションサービスが増えてきた。
ライトユーザー向けに低価格なサービスを提供するIIJ
データ通信専用サービスに限らず、通信サービスは利用パターンに応じて、最適なプランを選べるように商品設計がされている。
例えば“電話番号”そのものに拘束力がある音声サービスの場合、長期契約を結ぶことで料金が安くなるというメニューが、どこの携帯電話事業者にもある。
契約期間を保証し、契約を破棄する際のペナルティを明確化することでリスクを減らし、その分を基本料金に反映しよう……ということだ。
一方、データ通信の場合は、電話番号による拘束力がないため、契約を長期間維持する必要がなく、契約内容はシンプルになる。
しかし、通話時間と利用頻度に応じて料金プランがたくさん用意されているのと同じように、使用状況に合わせたプランがあるのは同じだ。
企業向けサービスメニューを用いる場合ならいざ知らず、単純なデータ通信サービスでもMVNO(携帯電話キャリアから通信帯域を購入して再販売する業態)が成立するのは、データ通信の頻度や量が利用者ごとに異なるからだ。
例えばIIJmio 高速モバイル/Dの場合、以下の2つがプランとして用意されている。
・ミニマムスタート128プラン
月々945円で速度上限が128Kbpsの通信プラン。100Mバイトあたり525円のデータ通信クーポンを購入すると、フルスピードのLTE(と3G)回線を利用できる。
・ファミリーシェア1GBプラン
月々2940 円で1Gバイトまで、フルスピードのLTE(と3G)回線を利用できるが、上限を超えると128Kbpsの速度制限がかかるプラン。100Mバイトあたり525円で、追加データ通信のクーポンを購入できるのは、ミニマムスタート128プランと同じ。最大3枚までのSIMカードを発行し通信容量をシェアできる。
なおいずれのプランでも、128kbpsに制限されている状態で3日間に366Mバイト以上のデータ通信を行うと、通信帯域制限が行われる“可能性がある”としている。
使い方は色々だが、普段はWebメールやカレンダーにアクセスできればいい程度で、ごくたまに出先でのヘビーな仕事をこなす、なんていう場合は前者だろうし、タブレットやPCでフルスピードを使いたいなら後者を選ぶべきだろう。
ただし、1カ月で1Gバイトを使い切らない場合でも、翌月に繰り越すことはできないし、不足分の追加単価は割高になる。月に1Gバイトを超える通信を行うユーザーには、どちらのプランも適していない。家族で通信データ量を共有するのなら、2Gバイトぐらいのプランも欲しいところだ。
とはいえ、すべての使い方に対してベストに近い料金プランを用意するのが難しいのも事実だ。IIJmioの場合、現時点では料金プランを途中から変更することができない。プランを変更したい場合は、前の契約をキャンセルした上で、初期費用の3150円を払って契約し直すことになる。
いろいろと制限が多いと感じる読者も多いだろうが、そうした制限があるからこそ、その商品が対象にしている特定範囲のユーザーに対しては、安価なサービスを提供できるわけだ。
“通信サービスのBTO”を目指した日本通信
これに対して、日本通信がb-mobile4Gに対応する最初の通信サービスとして発表した「カメレオンSIM」は、ユーザー自らが、サービスメニューから通信サービスを選び、毎月プランを変更できる点を、もっとも大きな付加価値として訴求している。
カメレオンSIMは、パッケージ販売されるSIMカードで、音声サービスはなく、データ通信専用となっている。
開通後21日間、3Gバイトまでのデータ通信容量が「フラット 3W」として提供されており、価格は5800円だ。
初期試用期間中は、通信速度の制約はない。
この期間に、自分がどのぐらい通信を利用するのかを確かめ、利用頻度に合わせて“後から”料金プランを選択する。
しかも選択したプランは1カ月ごとに見直しが可能だ。
途中で気が変わったり、生活スタイルが変化すれば、再契約することなく自由に料金プランを選び直せる。
プラン変更はWebブラウザで専用サイトにアクセスして行う。
サービス開始当初のプランは以下の3つ。
・U300定額
おなじみの最大300Kbps、月額2480円のサービス。
3G向けのU300とは異なるAPNを用いており、またLTE接続時は遅延が少ない(レイテンシが低い)ため体感速度はかなり速くなるとのこと。
・高速定額
速度制限なしで30日間、もしくは5Gバイトまでを5400円で利用できるプラン
・Fair 1GB
速度制限なしで120日間、もしくは1Gバイトまで8800円のプラン。IIJmioよりも容量単価、月あたり単価とも安価だが契約期間・容量の単位は大きい
料金設定のポイントが異なるため、IIJmioと単純に比較することはできないが、NTTドコモからの仕入れ価格には差はないと考えられる。
あとはプラン設定と料金などのバランス(そしてもちろんオペレーションコストの削減)で、異なる特徴を引き出しているわけだ。
もし月ごとの利用にムラが多いなら、Fair 1GBが容量単価という面でも良いだろうし、U300 1Mとフラット 1Mを月ごとに切り替えたい人もいるかもしれない。
日本通信は以前から「通信サービスをBTOで提供したい」と考えており、今回の商品はその第一歩とのことだ。
ただし不満な点もある。
それは月ごとにしか契約を変更できない点、それにFairのメニューが1つしかない点(期間と容量を選べればベストだろう)の2つ。
失効期限が短くても容量単価が下がる方がいいという人や、3日間だけ高速定額で使いたいという利用者に対応できれば、“通信のBTO”はより魅力的になる。
日本通信COOの福田尚久氏は「システムの設計としては1日単位でも切り替えが可能。
しかし、課金方法の問題がある。基本契約はU300定額だが、オプションの購入で1日高速になるといったメニューは将来、提供したい」と話していた。
また、料金プランも上記の3種類以外に、ニーズや利用者の使い方を見ながら、随時追加していくとのことだ。
契約し直さなくとも、ベースとなる料金プランを随時選び直せるため、将来、新たなサービスが開始した時にも初期投資をしなおす必要がない。
4G MVNOで顕在化するAPNロック
このように単価としての安い、高いよりも、自分の使い方に合ったプランを選べるのが、MVNOを利用する最大の利点だ。
ドコモのXi端末にはSIMロックがなく、音声サービスが使えないことを除けば、IIJmioでもb-mobile4GでもSIMカードを挿入すればデータ通信部分は利用できる。
ところが、ドコモのほとんどのXi端末には現在、APNロックがかかっている(全機種を調査したわけではない)。
これはXi端末だけでなく、FOMA端末でも同じだ。
APNロックとは、特定のAPN(データ通信時のアクセスポイント)に接続する時をのぞいて、機能を制限すること。
具体的にはドコモ以外のSIMを挿入すると、テザリング機能がメニューからなくなってしまう。
特定のAPNとは、ドコモ自身が提供しているmoperaのみなので、IIJmioやb-mobile4GのLTE対応SIMカードを装着した時にはテザリングができない。
いくらSIMロックはかけていないといっても、APNで機能制限をかけるのでは意味がない。
総務省とドコモ、それに日本通信で、APNロック解除に向けた話し合いがされているとのことだが、現時点で結論は出ていないという。
今はまだ音声サービスが利用できるLTE対応サービスがMVNOから販売されていないため、大きな問題にはなっていない。
しかし、音声サービスのメニューも追加されるようになれば、手持ちのXi端末をMVNOのサービスで使う人も出てくるだろう。
MVNOのSIMカードに入れ替えたら、それまで使えた機能が使えなくなる、なんてことがあると、(どちらに有利・不利という話は別にして)消費者にとって不利益だ。
通信サービスのあらゆるニーズに、今回紹介した二社のサービスが完璧に対応できるわけではない。
MVNOの選択肢が拡がるには、APNロック問題は解決していかねばならないだろう(そもそもAPNロックで機能を自由に制限できるなら、MVNOの受け入れ義務を定めている意味がない)。
もっとも、APNロックの問題はドコモのスマートフォンだけに限ったものではない。
ケースバイケースで、テザリング用APNを設定しているのに、APN名が保存できなくなっているものもあるという。
このようなことでは、本来SIMロックをなくす目的だった“通信サービスと端末の分離”にはならない。
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